調査報告書を手に、夫の裏切りと向き合ったあなた。
心は、今、二つの大きな感情の間で、引き裂かれそうになっているかもしれませんね。
「こんな裏切り、絶対に許せない。慰謝料は、きっちり払ってもらいたい」
「でも、離婚はしたくない。できることなら、もう一度、家族としてやり直したい…」
その、矛盾した、あまりにも人間らしい感情。
それは、決してわがままなどではありません。あなたが、それだけ深く悩み、家族を大切に思っている、何よりの証拠です。
こんにちは、みさきです。
かつての私も、「離婚」という二文字しか、頭にありませんでした。
ですが、世の中には、離婚という道を選せずに、あなたの尊厳を取り戻し、新しい関係を始めるための、もう一つの道が存在するのです。
この記事では、専門家のチェックを経て、情報をより正確にアップデートしました。
離婚せずに、浮気の慰謝料だけを請求する方法と、その光(メリット)、そして、あなたが絶対に知っておくべき影(デメリット)について、私の経験の全てを込めて、お話しします。
結論:離婚しなくても、慰謝料請求は「できる」…ただし、いくつか確認したいこと
まず、一番大切な結論から。
離婚をしなくても、配偶者と、その浮気相手の両方に対して、慰謝料を請求することは、法的に、完全に可能です。
なぜなら、浮気(法律上は「不貞行為」といいます)は、「夫婦の平穏で円満な共同生活を送る権利」を侵害する、「不法行為」にあたるからです。そして、その不法行為によってあなたが受けた精神的な苦痛に対する賠償金が、「慰謝料」なのです。この権利は、あなたが離婚するかどうかとは、全く別の問題として、法的に認められています。
ただし、請求するためには絶対に欠かせない条件があります。それは、「肉体関係があったことを示す、客観的な証拠」です。残念ながら、ただ仲が良さそう、といった状況だけでは請求は非常に困難になります。
でも、実はそれだけじゃないんです。 請求に踏み切る前に、あなたに、そっと確認しておきたいことが、いくつかあります。
- 浮気相手は、あなたの夫が結婚しているって、知っていたでしょうか? もし、夫が独身だと嘘をついていて、相手がそれを信じ込んでいた場合、相手への請求は難しくなることがあります。
- 夫の裏切りが始まる前、あなたの家庭は円満でしたか? もし、残念ながら、不倫が始まる前から、夫婦関係が誰の目から見ても壊れていた(例えば、もう何年も別居しているとか…)場合、「裏切りによって壊されたものがない」と判断されてしまうことがあるのです。でも、安心してください。単に「最近、夫婦喧嘩が多かった」とか「会話が少なくなっていた」というだけでは、すぐに「関係が壊れていた」とは見なされません。
- 裏切りを知ってから、時間が経ちすぎていませんか? 慰謝料を請求できる権利には、「相手の素性を知ってから3年」というタイムリミットがあります。悲しみや怒りで動けない気持ちは痛いほどわかりますが、時間だけは、待ってくれないのです。これに加えて、「不法行為の時から20年」というもう一つの期間制限もあります。
これらは、少し難しい話かもしれません。でも、あなたが傷つかないために、とても大切なことなので、頭の片隅に置いておいてくださいね。
なぜ、「離婚しない」という選択肢を選ぶのか?【3つのメリット】
では、あえて離婚という道を選ず、慰謝料請求に留めることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1. 経済的な基盤を、守りやすい
これが、最も現実的で、大きなメリットかもしれません。
特に、あなたが専業主婦であったり、お子さんがまだ小さかったりする場合、離婚は大きな経済的な不安を伴います。
婚姻関係を続けることで、これまでの生活水準を維持しながら、心の傷に対する金銭的な賠償を受け取ることができます。ただし、請求相手が自分の夫の場合、夫婦の共有財産から支払われると、家計全体で見ればプラスマイナスゼロになってしまうこともあります。そのため、実際には浮気相手にだけ請求するケースがほとんどです。
【でも、少しだけ考えてみて】
慰謝料を請求したことで、夫との関係がさらにギクシャクしてしまい、気まずさから生活費を渡してくれなくなる…なんて可能性も、悲しいけれどゼロではありません。経済的な安定が、必ずしも約束されるわけではない、という側面も心に留めておく必要があります。
2. 子どもへの影響を、考えられる
両親の離婚が、子どもに与える精神的な影響は、計り知れません。
「子どものために、父親を奪いたくない」
その一心で、この道を選ぶ方は、本当にたくさんいらっしゃいます。
表面上だけでも、家族という形を守る。それもまた、母親としての、一つの、深く、そして尊い愛情の形です。
【でも、少しだけ考えてみて】
子どもは、大人が思う以上に、家庭の空気に敏感です。パパとママの間に、笑顔も会話もない「仮面夫婦」の状態でいることが、本当に子どもの心の安定に繋がるのか…それもまた、深く考えてみる必要があるかもしれません。
3. 新しい「夫婦のルール」を作る、きっかけになる
慰謝料を請求するという行為は、単にお金を受け取って終わり、ではありません。
それは、「私は、あなたの裏切りを、これだけ重いことだと受け止めています。二度と、同じ過ちは許しません」という、あなたの揺るぎない意思を、相手に突きつける、極めて強力なメッセージです。
この出来事をきっかけに、慰謝料の支払いなどを約束する「示談書」という正式な書類を交わします。この中で、「相手に二度と会わない」という接触禁止の約束や、もし破ったら「違約金を支払う」といったペナルティを決めることができます。これを機に、あなたが主導権を握った形で、新しい夫婦関係のルールを、ゼロから築き直す。そんな、未来への一歩にすることも、可能なのです。
例えば、これを機に夫婦で専門家のカウンセリングを受けてみる、というのも一つの方法です。二人だけでは感情的になってしまうことも、第三者が入ることで冷静に話し合い、お互いの気持ちをもう一度理解し直すきっかけになるかもしれません。
それでも、あなたが知っておくべき「3つの大きな壁」
しかし、この道は、決して平坦なものではありません。
むしろ、離婚以上に、いばらの道になる可能性も、覚悟しておかなければなりません。
1. 壊れた信頼関係の中で、暮らし続けるという「苦痛」
お金は、あなたの傷を、ある程度は癒してくれるかもしれません。
ですが、一度失われた信頼は、そう簡単には戻りません。
夫の帰りが少しでも遅いと、また疑ってしまう。
夫の笑顔を見ても、その裏に嘘があるのではないかと、心が冷めてしまう。
そんな、「仮面夫婦」として、これから先の人生を、ずっと生きていく。その精神的な苦痛は、あなたが想像している以上に、重いものかもしれません。
2. 慰謝料の金額が、相場より低くなる現実
慰謝料の額は、「不貞行為によって、どれだけ婚姻関係が破壊されたか」で決まる傾向があります。
そのため、「離婚には至らなかった」という事実は、「受けた損害は、離婚する場合よりも小さい」と判断され、慰謝料の額が低くなるのが一般的です。
状況 | 慰謝料相場の目安 |
---|---|
離婚しない場合 | 50万円~200万円程度 |
離婚する場合 | 100万円~300万円程度 |
もちろん、不倫の期間や悪質さなど、様々な事情によって金額は変わりますが、この差は知っておく必要があります。
3. 【最重要】知っておきたい「求償権」という交渉カード
これは、少し難しい話かもしれませんが、あなたが後で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、とても大切なことです。特に、浮気相手にのみ、慰謝料を請求した場合に関わってきます。
- 求償権(きゅうしょうけん)とは?
- 不貞行為は、夫と浮気相手の「共同不法行為」です。つまり、法律上の責任は二人にあります。
- もし、あなたが浮気相手から慰謝料の全額(例えば100万円)を受け取ったとします。その浮気相手は、もう一人の責任者であるあなたの夫に対して、「あなたの責任分(通常は半額程度)を、私に払ってください」と、お金を請求する権利があるのです。
これが、何を意味するか、分かりますか?
あなたが浮気相手から100万円を受け取っても、その後、夫が浮気相手に50万円を支払う。
結果として、夫婦の家計から、浮気相手にお金が渡ってしまい、手元に残るのは実質50万円だけ、という事態が起こり得るのです。
そして、ここからが本当に大事な話です。
この「求償権」は、不倫相手との交渉で、定番の『交渉カード』として使われることがほとんどなのです。
「慰謝料を少し安くしてくれるなら、あなたの夫には請求しませんよ(求償権を放棄します)」
まるで取引のように、こう持ちかけられることが多いのです。
これは「罠」というより、お互いの手間を省いて、問題を一度で解決するための現実的な「交渉」と捉えることができます。
ですから、あなたが選ぶのは「高い慰謝料か、安い慰謝料か」という単純な二択ではありません。「後から夫に請求されるかもしれないけれど満額を目指すか、それとも、もらう額は少し減るけれど、この交渉を最後にきっぱり終わらせるか」という、あなたの心の平穏を一番に考えた選択をする、ということなのです。この判断は、本当に心が揺れますよね。
まとめ:それでも、あなたがこの道を選ぶなら
メリットも、デメリットも、全てを理解した上で。
それでも、あなたが「離婚しない」という道を選ぶのなら。
その決断は、誰にも、決して、否定されるべきものではありません。
それは、あなたが、あなたの家族を、あなたの人生を、守り抜くために下した、最も尊い決断だからです。
ただし、そのいばらの道を、どうか、一人で歩かないでください。
特に、先ほどお話しした「求償権」のような複雑な交渉を有利に進め、法的にあなたと家族を守ってくれるしっかりとした示談書を作成するためには、弁護士という専門家のサポートが、絶対に不可欠です。
あなたのその尊い決断が、後悔に変わってしまわないように。
どうか、その最初の一歩だけは、間違えないでくださいね。
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