「今、この瞬間も、夫はどこで誰と会っているんだろう…」
居ても立ってもいられない、胸が張り裂けそうな不安。
その不安から逃れるために、あなたは今、「GPS」という言葉に、一縷の望みを託そうとしているのかもしれませんね。
「せめて、どこにいるかだけでも分かれば…」
その気持ち、痛いほど分かります。私も、そうでしたから。
こんにちは、みさきです。
この記事は、あなたが「GPSを使って、自分で真実を確かめたい」という、あまりにも危険な一線を越えてしまう前に、どうか、一度だけでも読んでほしいと願って書いています。
この記事でお話しするのは、「バレないGPSの使い方」ではありません。
その行動の先に待っている、あなたが圧倒的に不利になる、あまりにも大きな「リスク」と「法律の壁」についてです。
結論:あなたのGPS調査は「犯罪」になる可能性が極めて高い
いきなり、厳しい言葉でごめんなさい。
でも、これが、あなたを守るための、偽りのない真実です。
あなたが、パートナーの車や持ち物に、無断でGPSを取り付ける行為。
それは、あなたが思っている以上に、「犯罪」と判断される可能性が非常に高い、危険な賭けなのです。
具体的には、以下のような法律に明確に触れる可能性があります。
- ストーカー規制法違反: これが最も大きなリスクです。かつてはグレーゾーンと見なされることもありましたが、2021年の法改正により、相手の承諾なくGPS機器等を用いて位置情報を取得する行為は、明確にストーカー規制法の規制対象となりました。これは、過去の最高裁判所の判断を受けて法整備が進んだ結果であり、もはや「知らなかった」では済まされません。懲役や罰金といった重い刑事罰が科される可能性のある、紛れもない犯罪行為です。
- プライバシーの侵害(不法行為): 「夫婦なのにプライバシーなんてあるの?」そう思うかもしれません。しかし、法律の世界では、たとえ夫婦であっても、相手のプライバシーを無断で侵害することは許されません。実際に、令和6年(2024年)3月の旭川地方裁判所の判決では、妻の依頼を受けた探偵業者が夫の車に無断でGPSを設置した行為がプライバシー侵害にあたるとして、損害賠償が命じられました。この判決は、「たとえ配偶者の依頼であっても、本人の同意なく位置情報を取得することは違法である」という司法の判断を明確に示した、非常に重要なものです。
- 住居侵入罪・器物損壊罪: GPSを取り付けるために、相手が管理する駐車場(マンションの共有駐車場や相手の勤務先など)に無断で立ち入れば住居侵入罪(建造物侵入罪)に、設置の際に車を傷つければ器物損壊罪に問われる可能性があります。
GPSの証拠は、慰謝料請求では「ほぼ無力」
さらに、残酷な事実をお伝えしなければなりません。
たとえあなたが刑事罰のリスクを冒してGPSでパートナーの行動を追跡し、「ラブホテルに行った」という事実を突き止めたとしても。
そのGPSデータは、それ単体では、慰謝料請求の決定的な証拠には、ほとんどなりません。
なぜなら、裁判所が不貞行為の証拠として求めるのは「肉体関係があったこと」を客観的に証明する証拠だからです。
GPSの記録は、あくまで「その場所にGPS機器を積んだ車があった」という事実を示すだけで、
- 「誰が」その車に乗っていたのか?
- 「誰と」ホテルに入ったのか?
- ホテルに入って「何をした」のか?
ということは、一切証明してくれません。
「一人で休憩していた」「仕事の相手と打ち合わせで使った」「友人に車を貸していた」と言い逃れされてしまえば、それまでなのです。GPSデータは、あくまで状況証拠の一つに過ぎず、それだけで裁判に勝つことは極めて困難です。
リスクを冒して手に入れた情報が、いざという時に全く役に立たない。
これほど、虚しいことはありませんよね。
最悪のシナリオ:あなたが「加害者」になる未来
どうか、想像してみてください。
良かれと思って取り付けたGPSが、パートナーにバレてしまった時のことを。
- 彼は、あなたを「犯罪者」として糾弾するでしょう。
- あなたの違法な調査行為は、夫婦関係を決定的に破綻させた「有責行為」と見なされるかもしれません。
- 彼から離婚を切り出され、プライバシー侵害を理由に逆に慰謝料を請求される(反訴される)立場に、あなたがなってしまう可能性すらあるのです。
実際に、行き過ぎた調査行為が原因で、調査をした側が離婚原因を作った「有責配偶者」と認定され、慰謝料の支払いを命じられた裁判例も存在します。
真実を知りたかっただけの純粋な気持ちが、あなたを「被害者」から「加害者」の立場に転落させてしまう。
そんな悲しい結末を、私はあなたに、絶対に迎えてほしくありません。
まとめ:そのGPSは、あなたの未来を照らさない
もう一度、大切なことなので、法的根拠を添えて繰り返します。
- 無断でのGPS設置は、2021年に改正されたストーカー規制法に違反する「犯罪」になる可能性が極めて高い。
- GPSの記録だけでは、不貞行為の「決定的な証拠」にはならず、慰謝料請求は困難。
- 発覚すれば、プライバシー侵害で逆に訴えられ、あなたが「有責配偶者」という加害者の立場になりかねない。
そのGPSは、あなたの不安な心を、一瞬だけ照らしてくれるかもしれません。
ですが、それは、あなたの未来を明るく照らす光では決してなく、あなた自身を焼き尽くす炎になりかねないのです。
どうか、その危険な光に、手を伸ばさないでください。
あなたのその手の中にある「知りたい」という切実な気持ちを、安全で、確実な形で「真実」へと導いてくれる方法は、他に必ずあるのですから。まずは、離婚問題に詳しい弁護士など、法律の専門家に相談することから始めてみてください。
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